---説経浄瑠璃の世界に入られたきっかけと言うのは、どのようなものだったのでしょう?
説経を始めたのは、25歳の時です。
夜間学生をやっており、土曜の昼間に、
先代の下に通っておりました。
元々、説経浄瑠璃の事は、
どこかで知っていたんですね。
多分、テレビで見たんだと思います。
義太夫とはまた違い、直接的に心に訴える語り芸もあるんだな。と思いました。
その時点では、まだ、弟子に付こうとは思っていなかったんです。
先代が、昭和63年の芸術祭優秀賞を受賞した記事を見た頃からでしょうか?
だんだんと興味が湧いてきました。
今は無いのですが、成増公民館で、先代が、公演すると耳にしたんです。
そこで、公民館の和室で説経を二段ほど聴いたんです。
「小栗判官」と「山椒太夫」と言う、お得意のものを披露したんですけれどもね。
その出し物の終わりに、先代が、
「今日お集まりのお客さんの中で、習いたいと言う方があれば、家には三味線もありますし、お茶も沸いていますので歓迎します。」
と言ったんですね。
そこで、伺っても門前払いと言う事もないだろうし、
私も三味線に少々心得があったので、やってみようか!
と、興味を持ち、それがきっかけで弟子入りしたんです。
---説経浄瑠璃というものを、簡単にレクチャーしていただけますか?
元々は、文字通り、お坊さんの講釈から始まったのですが、
時代時代に合わせて、色々なバリエーションの話が生れたんですね。
室町後期から江戸初期の説経師は、いわゆる大道芸だったんです。
今でも、当時の屏風などを観ると、
街角で、説経師が話をして、人々が、涙を流しながら、金銭を投げ与えている姿が、
表現されていますよ。
今の、説経浄瑠璃の姿にはなったのは、三味線と言う楽器が日本に渡ってきた頃で、
江戸時代になってからですね。
その後、一時、衰退するんです。しかし、江戸時代の中期に人気が復活するのですが、
流行廃りがありますから、人気が衰退して行くんですね。
当時の家元は、本所の当たりにいたのですが、
五代目頃は、板橋の仲宿に住む、諏訪仙之助という人でした。
薩摩若太夫というのですけれども、若松は、その五代目から分かれた名前です。
五代目のお墓は、東京大仏で有名な乗蓮寺にありますよ。
---現在、若松さんは、浄瑠璃とどのように接せられていますか?
ライフワークのようなものでしょうか・・・
現在、区立の郷土芸能伝承館で、説経浄瑠璃の講座を開いているんです。
そして、独演会を年に2回行っております。
今度は、来年の1月に、成増アクトホールで鑑賞会をしたりと、年10回〜15回程、公演をしております。
芸と言うのは、嫌いではやって行けませんが、
やはりそれなりに大変な事もあるんです。
先代と同じ演目をしていたのでは、能が無いので、それが難しいところですね。
先代が、かなり個性的な語りだったものですから、若松若太夫と言うと、
先代を思い出す人が多いんですね。
しかし、自分なりのスタイルを打ち出していこうと、努力しております。
---大体、お稽古の時間と言うのは、どのくらいなのでしょう?
大体、夜、仕事から帰宅して、練習しています。
本番前は、本当に、根を詰めて練習していますね!
三味線だけは、毎日必ず触るようにしています。
声の方は、色々な所で出せるので、通勤途中に人気の無いところで、
歩きながら練習したりしますね。(笑)
声は、室内よりも、外で出した方がお稽古になるんですね。
---説経を聴かせる時に、注意している事などはございますか?
先代の演奏スタイルが、とても情熱的な演奏スタイルだったので、その影響は、強く引いていますね。
私としては、大きな声で、わかりやすく語ると言う事を心掛けています。
---板橋をベースに活動されていて、板橋の印象はいかがですか?
先代の住んでいた、小豆沢には、弟子入りした時に通っていたので、
懐かしい思い出で一杯ですね!
下町的なところもあって、僕は大好きな街ですね。
ただ、私が、板橋の無形文化財に指定されているのですけれども、
まだまだ知名度が無いんです。
知っている方は知っているのですが、ご存知無い方の方が、大多数なんですね。
もっともっと、区民の皆さんに、説経浄瑠璃を知っていただきたいですね!
---板橋区民の方々に、一言メッセージをお願いします。
伝統芸能なので、引き継いでいくためにも、
若い方に、もっともっと、
馴染んでいただきたいと思います。
あとは、やはり、一度は舞台を聴きにいらして、
板橋に説経浄瑠璃があるんだ。と言う事を、
なるべく多くの区民の方に、
知ってもらい、親しんでいただきたい。
それが、抱負であり、メッセージですね!
---ありがとうございます!
平成19年1月13日(土)に、
成増アクトホールで「説経浄瑠璃鑑賞会」が催されます。
問い合わせは生涯学習課文化財係3579−2636まで。
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