○提灯書きを始められた、提灯の世界にはいられたきっかけはなんだったのですか?
先代が台東区に店を出してやっていたのですが、東京大空襲で家が焼けて板橋区にやってきたんです。昭和20年ですかね。
昭和25年に高校を卒業してからずっと書いています。
もともと家業が提灯屋をやっていたもので、親のすることを見て育ちましたから自然と同じ道に進んだといいますか、好きだったと言う事もあります。
私は次男ですが長男がサラリーマンになってしまったので、家業を継ぐためでもありました。
今一緒にやっている息子も次男なんですよ。
提灯をやりたいと言ってくれたものですから、嬉しかったですね。
(息子さんの正さんに聞きました)
○提灯書きをやりたいと思ったのはどんなところですかね?
人のやらない事をやるのが好きだという事ですかね。
二十歳のときからやっていますので、21年になりますがまだまだですね。
○提灯書きの醍醐味はどんなところですか?
自分で気に入ったものが出来た時の喜びですかね。
どの職人さんも同じだと思うのですが、自己採点で90点以上の物が出来たときは本当に嬉しいですね。
本当に満足できる作品はなかなか出来ないものです。
仕事はいくらやってもきりが無いですよね。
これで良いということはないですね。
○苦労話や楽しかった事などお聞かせ下さい。
昔は、昭和30年〜40年ごろですが、お祭り時期が大変忙しかったですね。
盆踊りやお祭りには提灯は欠かせないものですので、
時期になると仕事が多くて、何日も徹夜作業が続き、家族総出で仕事をして、仕事が終わった後の一家団欒のことをよく思い出します。
大変だったけれど楽しかった出来事ですね。
○特徴のある書体は、決められた書体があるのですか?
それとも早川さん独自のものなのですか?
書体は提灯屋によって違います。
同じ様に見えても違うのです。
書いた本人が見ると分かりますよ。私が書いたものはすぐに分かりますね。
私の文字は父から習ったもので、その家の書体と言ってもいいですね。
○丸い提灯に文字を書くのは難しいと思うのですが・・・
文字を書く方法には二通りのやり方があります。
出来上がった提灯に直接文字を書くやり方と、平紙に文字を書いたあとで提灯に貼るやり方があるのですが、
提灯に直接書くより、平紙に書くのは難しいですね。
ボールのような提灯に貼り付けるので普通に書いたのでは駄目なんです。
曲がり具合を頭に入れて書かないと貼り付けた後のバランスが悪かったりして商品になりません。
職人の腕の見せ所ですかね。
○提灯に書く以外にどのような仕事があるんでしょうか?
商店街のセールやお祭り等のポスター広告類、結婚式や各種パーティ、お祝いに送る花の寄贈用立て札、式次第、表彰状などです。
このようなものにも、印刷技術が発達してきて印刷できるようになってきています。
ますます仕事が減ってきますよね。
○今、一番の関心事は何ですか?
機械化されて来た事で、筆文字書きの需要が激減している事が一番の心配事です。
一つ二つの物だと、手書きのほうが経費的にも安いのですが、数が増えると印刷したほうが早くて安いんですね。
仕事が減るとどうしても廃業する方が増えていって、1個書いてもらおうと思っても書く人がいなくなってしまいますよね。
○板橋区には何軒ぐらいの提灯屋さんがあるのですか?
2軒だけですね、うちともう一軒です。以前は5軒ほどあったのですが、東京全体でも40軒ぐらいです。
○今後の夢や目標などお聞かせ下さい。
手書き筆文字の良さをもっと多くの方に知ってもらいたいですね。
機械的なものと手書きのものとの違いを知っていただければ嬉しいですね。
知っていただけるような活動もしていきたいと思っています。
○いたばし区民の方へ一言
区役所や観光センター、郷土資料館等で催される板橋区伝統工芸展に、多くの方に足を運んでいただき、伝統工芸の素晴らしさ、手作りの良さを実感していただきたいですね。
○ありがとうございました。
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