|
---金型職人の世界に入られたきっかけは、なんだったのでしょう?
私の作る金型とは、プラスチックの金型なのですが、パソコンのボディもそうですが、プラスチック製品全てに関係する金型なんです。
鉄の型をもとに、全てのプラスチック製品は作られているんですね。
きっかけというのは、私の子どもの頃というのは、学校に行く人というのは本当に少なく、
ほとんどが集団就職だったんです。
それで、渋谷の金型屋さんに入社して、それからずっと金型一筋で、今に至っていますね。もう、45年ぐらいになります。
---金型という技術は、難しい技術なのですか?
日本の職人の技術の中でも、最高峰の技術だと言われていますね。
今、韓国や中国が進出していますが、金型自体は、日本の誇れる技術ですね。
---高橋さんと言うと、板橋区の発明賞も受賞された、しおりの「スワンタッチ」などが有名ですが、スワンタッチは、どのようにして生まれたのですか?
もともと、私が本を読む事が好きなところから来ているんです。
昭和61年に、発明展で受賞したのですが、その頃は、全てが手作りでした。
その時から15、6年が経ちますが、実際に使えるようになり、世に出始めたのは、この4、5年です。
スワンタッチの薄さがありますよね?
その薄さが、当時の金型技術では、実現出来なかったんです。
一見、板をくりぬいて作っているように見えますよね?
実は、鉄の型に、プラスチック溶液を流し込んで作っているんです。
本の紙を傷めない柔らかさを出すために、どうしても、今の柔らかさのものを作りたかったんです。
普通は、一箇所から溶液を流し込むのですが、これは二箇所から流し込んでいます。
手間なのですが、単なる板でもあるところが、評価されにくいところでもありますね。
ほとんど、言ってもわかってもらえないんです。笑
---今では、様々なところで発売されていますよね。
東急ハンズや、京王デパートで売っています。
北は札幌から、西は名古屋まで、14店舗で売っています。
京王デパートで店頭販売して下さったのですが、一日に、300枚から400枚が売れたんですね。
東急ハンズでも、テレビに出してくださったり、民間のラジオでも告知してくださったおかげで、全国から注文が来るようになりました。
---それでは、製作が追いつかないのでは?
ご近所に、赤塚福祉園さんがあるのですが、そこに通っている、障害を持っている子ども達に、作ってもらっているんです。
たまたま、私が障害を持っている子のボランティアをしていた事がきっかけなのですが。
はじめは、製品シールを貼るだけだったのですが、今では、全工程をやってもらっています。
仕事の需要が出来たと、喜んでいただいていて、何よりです。
---そして、今年は、「うすけずり」という爪削りで発明賞を受賞されましたね。
これは、面白い事がきっかけで出来たものなんです。
五円玉ってありますよね?あれを、何気なくいじっていたら、丸のところで、爪が削れるんです。
職人の道具に「きさげ」というものがあって、柔らかいものには反応しないけれど、固いものには反応するという道具があるんです。
その原理を応用しました。
---ちなみに、この爪削りの製作期間というものはどのくらいなのでしょう?
考案して、頭に3、4年ぐらい置いてありましたね。
スワンタッチが一息ついたので、爪削りに移ったところです。
製作費を最小限に抑えるために、最小限の金属と、プラスチックで作っています。
しかし、今、木のボディの爪削りも作りたいんです。
障害を持った子が使えるようにです。
手の不自由な子が、安心して、安全に爪が削れるようにというものと、自立対策の一貫にもなればいいな。と、思いまして。
それで、今、木でやっているのですが、寸法的にどうしても満足できるものがまだ出来ないんです。
丸い形の方は、京王デパートで発売しているのですが、木の方はまだ製品化には至りません。難しいところですね。
---板橋に長く住まわれて、板橋の思い出というものはいかがですか?
私は職人ですから、職人仲間の浮き沈みというものは、とても感じましたね。
バブルが崩壊して、本当に厳しくなりましたね。
金型作業というのは、大型機械とは違い、短時間で、大量のものは生み出せないんです。
そこがネックですよね。
板橋というと、やっぱり人情味が豊かですよね。特に私の住まいの赤塚近辺は。
---職人として、今後の展望がありましたら。
大きな会社を、旗本としたら、我々職人というものは野武士かな?
1人、2人で動いていて、何かあったら協力して作りあえるような。
そんな横のつながりがあれば、大手には対抗出来ると思うんですよね。
私は、職人として、金型磨きの技術を極めて行こうと思います。
---最後に、一言メッセージをお願いします!
私はこれといった信念もないのですが、
私の作ったもので、障害を持った方々の自立に、少しでもお役に立てれば。
と、心底思っています。
仕事を一生懸命やって、何年か1回に、発明で賞をもらう。
何にでも挑戦して行く事。そういう事が生きがいですね。
---ありがとうございます!
|
|
|