板橋区地域情報サイト 板橋をもっと楽しく!もっと便利に! いたばしらいふ.com

いたばし検索 いたばしインフォ いたばしコミュニティ いたばしサークル・ボランティア いたばしらいふなBLOG

いたばしsearch
HOME >> 板橋な人
板橋な人
中村和明さん

昔からある根付の製作者として、第二の人生を根付で送れるのも、平和で幸せだからこそです。


「根付」知っていますか?
時代劇に出てくる武士の侍の印籠、町人の煙草入れなどにぶら下がっている、小さな彫刻。
今風にいえば、ストラップですかね。
赤塚に、その根付の彫刻師で板橋伝統工芸保存会の中村和明さんが住んでおられます。
根付についてお話を伺ってきました。
中村和明さん
中村和明さん


手のひらの宇宙とでもいうのでしょうか。

○中村さんが根付の世界に入られたきっかけからお話しください。
根付の世界に入ったのは40過ぎからなんです。
本格的に始めたのは50歳ぐらいからです。今度、64歳になります。
根付の世界に入る前までは、自営業で商売をやっておりました。根付が好きで、商売をしながら趣味で彫っていたんです。
木彫りから何から何まで、彫り物は少しづつ携わっていました。
年をとったら本格的にやりたいなと思っていたのがきっかけですね。

四葉町で生まれ育ったので、生まれも育ちもここ(赤塚)が地元です。
赤塚の土地で商売を30数年間営んでいたんですよ。
家庭の事情で学校を出られなかったもので、食べる為には商売をして、50歳になったら多少余裕が出て来ましたので、これまで、趣味でやっていた根付をいよいよ本格的に始めました。
本格的な修業をするために、桜井先生という方のもとに年寄りの入門をしたんです。
色々と教えていただき、テクニックを身につけました。
今では楽しみながらやっております。

○根付のどのようなところに惹かれたのですか?
彫り物というと、大きい彫刻を連想しますが、私の場合は手のひらにのる彫刻です。
なにより手のひらの中に、夢のある作品が収まるところが魅力ですよね。
丸から六面体まで、後ろも前も全てが手彫りなんです。
手のひらの宇宙とでもいうのでしょうか。

○材料は、やはり象牙が多いのですか?
材料は、象牙、柘植、鹿の角、イノシシの牙、熊の牙。
場合によっては琥珀など、固い材料に手彫りで彫っていきます。
彫刻刀も普通のものとは少し異なるものを使うんです。
最初は、象牙が手に入らなかったものでほとんど木彫りだったので、普通の彫刻刀で彫っていたのですが、硬い物を彫るためには、普通の彫刻刀では駄目なんです。根付専門の彫刻刀ですね。
その彫刻刀を手に入れるために、鍛冶屋さんにも入門したんですよ。
おかげさまで、彫刻刀も日本では私しか使っていないものを手に入れる事が出来ました。
今では、彫刻刀を作る人も私しかいなくなりました。
普通の彫刻刀はどこででも取り扱っておりますが、根付で使う彫刻刀は、彫る場面に合わせて作られているんです。
数十種類から数百種類の彫刻刀を揃える事もあるんですよ。
高円宮妃殿下にも、彫刻刀を献上しました。
固いものを彫るものですから、鋼の良いものを使い、鍛え、焼き入れと焼き戻しを精巧にしなくてはいけないんです。
固すぎると折れますし、刀先が命ですからね。

全て手作りだから、一つとして同じ形のものがないんです。

○彫刻刀は、中村さんしか作れないとのことですが・・・。
はっきり言いまして、後継ぎがいないんです。
将来は、高円宮妃殿下に献上したものと同じものが一組ありますので、それを板橋区に献上したいと思っております。
後世に残せば、また誰かが作るかもしれませんので。

彫刻刀に関しては、結構注文が来るんです。
象牙彫刻会とか、象牙共同組合、東急ハンズでもいくらかは売っています。
それ以上は、私も根付の彫刻に携わりたいものですから無理ですね。

○その彫刻刀は、何処で作られているのですか?
赤塚では、音が大きくて近所迷惑になりますし場所もないので、寄居に工房を設けまして、炉に火を入れてトンチンカンと打っております。
今は良い鋼がありまして、日本刀の玉鋼に近い物が手に入ります。
しかし、難しいのは、鍛える事と焼き入れ、そして最後の焼き戻しが大変なんです。
全てはそこで決まってしまいます。

○根付の制作にかかる時間はどれほどなのですか?
象牙を刃物で削っていくので、一回にたくさんは彫れないんです。
一つをつくるのに、一週間で出来るのもあれば、一か月、数が月というのもあります。
小さなものを完成させるのにも、本当に時間がかかるものなんですよ。
一般の方に楽しんでいただくために、小さな根付も制作しております。
全て手作りだから、一つとして同じ形のものがないんです。
それもまた、魅力の一つですね。

○板橋区でも、郷土資料館で根付教室を行っていますよね。
伝統工芸士展に合わせて、板橋区の伝統工芸士の方たちが、教室を開いています。
小学生の方もたまに来られますが、やはり年配の方が多いですね。
出来あがると皆さん大喜びしてお帰りになりますよ。
一番大切な事は、好きになってもらう事ですね。
今年だけでも3回教室を開きましたよ。

○後継ぎの方がいない事が問題でしょうか?
そうですね。誰か教えて下さいと言いに来られる方がいらっしゃるといいですね。
台東区谷中にある、「日本象牙彫刻会」で教室をやっており、15人から20人ほどの大きさですが、根付をつくる人を養成しております。
一般の方にも教室を開いておりますので、興味を持たれて、勉強してみたいという方には、紹介しています。
東急ハンズさんなどで実演販売をしていると、興味のある方は半日ぐらい見ていかれますよ。
自分で教室を開く事も出来るのですが、なにしろ工房が狭いもので・・・。

みんなが幸せに楽しく生きられる。それが一番いいと思います

○中村さんのこれからの夢や目標をお願いします。
将来は個展を開きたいとおもっております。
自分ひとりで開いてもいいですし、2、3人ほどでもいいですし、大きな展示会を開いてみたいですね。

○最後に、いたばし区民の方に一言メッセージをお願いします。
こういう時代ですから、まずは人間が楽しく生きられる街づくりが大切ですよね。
みんなが幸せに楽しく生きられる。それが一番いいと思います。
日本は一番平和ですから。私が根付を出来るのも平和だからこそです。
昔からある根付の製作者として、第二の人生を根付で送れるのも、平和で幸せだからこそです。これからもがんばっていきたいですね!

○ありがとうございました。

プロフィール

中村 和明
板橋区赤塚在住
板橋伝統工芸保存会理事
日本象牙彫刻会理事
国際根付彫刻会会計

日本象牙彫刻会
〒110-0001 東京都台東区谷中7-17-15
TEL/FAX: 03-3827-2464(平日AM10:30〜PM5:00)
URL:http://gechou.jp/

○根付(ねつけ、ねづけ)とは、
江戸時代に煙草入れ、矢立て、印籠、小型の革製鞄(お金、食べ物、筆記用具、薬、煙草など小間物を入れた)などを紐で帯から吊るし持ち歩くときに用いた留め具。大きさは数cmから、小さいものは1cm位のものもある。
江戸時代から近代にかけての古根付と、昭和、平成の現代根付に大別される。高円宮憲仁親王が、収集家として名高かったことでも知られる。
製作国の日本以上に、日本国外では骨董的収集品として高く評価されている。
材質は堅い木(黄楊、一位、黒檀等)や象牙などが多い。江戸初期のものは簡素なものが多いが、時代と共に実用性と共に装飾性も重視されるようになり、江戸時代後期に入って爆発的に流行した。この頃になると細かい彫刻が施されるようになり、根付自体が美術品として収集の対象となった。明治時代に入ると海外から高い評価を得て主に輸出用に生産されるようになるが、この頃になると実用性は薄れ穴の空いた小型の精緻な彫刻としてより認知されるようになる。大正、昭和を経て一時衰退に向かうが、平成に入って様々な分野から技術者・多種多様な素材が参入、現代根付として再び動きが活発になりつつある。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


 

 



いたばしらいふ.comとは?利用規約プライバシーについてお問合せ